鹿島神宮に行ったら、鹿に親指の爪の付け根を噛まれた。
しばらくして、新しい爪が著しく変形した状態で生え、爪の生え際の形がそれ以前とは違った形になった。
それを見た彼女が、自分の人指し指を見せて、子供の頃に父親のそばでナタで遊んでいて指を切り、やはり爪の生え際の形が永遠に変わってしまったことを教えてくれた。
父親は巻いていた手拭いを外し、泣いている彼女の指にそれを硬く巻きつけて強く押さえ、大声で母親を呼びながら、田んぼから家まで彼女を抱えて走った。
その頃、まだ右と左の区別がつかなかった彼女は、傷がある方の手が左、傷がない方の手が右、というやり方でそれを覚え、左右が分からなくなった時は、中指で人差し指の傷を撫でると、それが左であることが分かった。
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