"ルアンダ人カガメが自国語の分析によって明らかにした思想によれば、存在するものは、力は必ず、次の四つのカテゴリーのいずれかに属する。(1)ムントゥ。知性を与えられた力というべきもので、神々や人間がこれに属する。(2)キントゥ。いわゆる《物》であり、動植物や鉱物がこれに属する。《眠れる力》あるいは《凍れる力》とでも言うべきもので、それ自体では活動を開始することができず、ムントゥの働きかけがあるときにのみ、目覚めた力として活動するのである。(3)クントゥ。いわゆる様式や観念の有する力であり、言葉やリズムはその代表的なものである。ムントゥのみがこの力を操作することができる。ムントゥはこの力を用いて凍れる力、キントゥに働きかける。(4)ハントゥ。時間と空間。これらも一種の力であり、事物を生起させ、配列する。これら四つのカテゴリーの名称に共通の語幹 Ntu はルアンダ語では力を意味する。 Ntu は、それ自体としては存在することができず、四つのカテゴリーのいずれかの様態をとることによってのみ存在するという。"
「阿部年晴『アフリカの創世神話』」