"ではこれが、人類の終焉なのか――ジャンは思った。彼の胸中にあるのは、あらゆる悲しみを越えた涯に横たわる、ある諦観だった。これが人類の終末なのか――いかなる予言者も予見しなかった終末、楽観主義と悲観主義とをともに退ける終末。にもかかわらず、この姿は妥当なのだ。それには、偉大な芸術作品の持つ崇高な必然性があった。ジャンは底知れぬ広がりをもった宇宙を見てきた。そして、宇宙が人類のための場所ではないことを知った。今こそ彼は悟った――かつて彼を星々へ誘った夢が、その究極の分析においていかに空しいものであったかを。なぜなら、ほかでもない、星々に通ずる道は二つに分かれていたが、そのいずれも、人間の希望や恐怖を少しでも斟酌してくれるようなゴールへはつながっていなかったからだ。"
『アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」福島正美 訳』